Webデザインが必要とされなくなる日

WebデザイナーやHP製作者にとってはショッキングなタイトルかも知れないコラムが目に止まった。HTMLをコツコツと覚えて自作してきた自分の経験から思うところに合致するトレンドとしてピンときたからである。

結論から先に言えば、Webサイトの方向性は
現在ではWordPressを使いこなすか、そのほかのWeb構築サービスを使うかという二択の、新しい時代が近づいている。

逆にいうと、HTMLやCSSなどの基本的な知識でさえも見る側にとって意識されず、そのぶん画像や動画などの撮影から編集、加工の技術という、よりプリミティブな領域の重要性があがっているといえるのではないか。

Webサイト全体の設計やデザインは、さほど重要でなくなる。

ただでさえスマートフォンでしかWebサイトを見ない層が増えており、狭い画面で複雑なデザインは鬱陶しいだけになっている。ということは、即座に情報をつかみやすく、関心を引きやすい写真や動画のつくり方・使い方に再び焦点があたる時代へと、業界が変わりゆくのではないか。

以下、

Webデザインが必要とされなくなる日
2014年05月12日
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー) MdN DESiGN INTERACTIVE
先日とある記事で見かけた、WordPressを保有するベンチャー企業AutomatticのCEOのコメントが気になった。WordPressはオープンソース型CMSとして無償配布していると同時に、SaaSとしてWordPress.com経由でWebサイトをオープンできるような仕組みを提供している。シェア的にはほぼ半々とのことだが、このシェアは数年で大きくバランスを崩して自社サーバ上でWordPressをホストする企業がほとんどになるというのである。

前回のコラムでWeb構築サービスを提供するベンチャー企業の躍進を伝えたが、彼らの多くはWordPress.comと同様に自社のWebサービス上へCMSを置き、広くユーザーに提供している。Automatticとしては、WordPress.comで勝負するのではなく、オープンソースを配布し、プラグイン提供やサポートで利益を出すディストリビューション型ビジネスに特化していくというわけだ。つまりAutomatticは、大企業を中心としたビジネスモデルにフォーカスをあてるということだろう。

ご存じかと思うが、WordPressは2014年時点で多くの主要Webサイトが採用している世界最大規模のCMSだ。もとはブログ構築システムだったが、さまざまなプラグインツールやテンプレートの拡張により、大規模な企業サイトの構築からコンテンツ管理をまかなえるCMSへと成長した。ブログの領域ではMovableTypeの後塵を拝していたものの、企業向けのCMS分野への進出を契機にやがて逆転し、現在では圧倒的な差をつけている。

台頭著しいWixやWeebly、SquareSpaceなどのWeb構築サービス企業は、基本的には中小企業向けのサービスといえる。というより、大企業はどうしても自分たちが直接管理するサーバ環境にWebサイトを置きたいという欲求が強いので、必然的に彼らを避けがちだ。

Automatticは、彼ら新興企業との直接対決を避けると同時に、みずからの陣地を固く守り、侵入を妨げる戦略をとろうというのだろう。そのために、Automatticは1.6億ドルもの巨額の資金調達で兵站の充実を図っている。

もともとWordPress.comにしてもそのほかのSaaS型Webサイト構築サービスも、一般企業やユーザーがサーバを購入したり、データセンターの契約を行なう手間やコストをなくすことで、Web制作会社やホスティングサービス企業を無力化しようというビジネスモデルだ。しかし、最近ではAWS(Amazon Web Services)をはじめとするクラウドコンピューティングのプロバイダが急増し、企業が自前のサーバやネットワークをもつことに躊躇する必要がなくなっている。Automatticとしては、そうしたクラウド環境の充実という時代が自社の後押しをすると考えているのだ。

本コラムの読者はWeb制作に関わる仕事をされている方が多いと思うが、HTMLやCSSなどの基本知識はいつまでも必要かもしれないものの、それらを巧妙に駆使してWebサイトをつくり込んでいく時代は、ほぼ終わりかけている。

現在ではWordPressを使いこなすか、そのほかのWeb構築サービスを使うかという二択の、新しい時代が近づいている。逆にいうと、HTMLやCSSなどの基本的な知識でさえもブラックボックス化されてきているが、そのぶん画像や動画などの撮影から編集、加工の技術という、よりプリミティブな領域の重要性があがっているといえるのではないか。

つまり

 

Webサイト全体の設計やデザインは、さほど重要でなくなる。

モバイルファーストになる

ただでさえスマートフォンでしかWebサイトを見ない層が増えており、狭い画面で複雑なデザインは鬱陶しいだけになっている。ということは、即座に情報をつかみやすく、関心を引きやすい写真や動画のつくり方・使い方に再び焦点があたる時代へと、業界が変わりゆくのではないか。

 

小川 浩氏は別コラム

オンラインパブリッシングサービスのクロスオーバー時代(前編) 2014年05月19日でこう述べているが、まさしく同じ過程に生きてきた私にとって共有できることばかり。

インターネットの歴史をひもとくと、まずNetscapeがマルチメディアに対応し、誰でも簡単にインターネット上の情報が閲覧できるWebブラウザを普及させた。これによりインターネットは市民権を得た。

さらに、Yahoo!が急増するWebサイトをインデックス(ポータルともいう)して情報の整理に手を付け、さらにGoogleが本格的に機能する検索エンジンとして人気を集めたことで、“情報を見る”という意味においてはほぼ現在と同じ環境が成立した。1990年代後半のことだ。

しかしながら、インターネット上で情報を発信するという点では、HTMLを直書きするしかない状況はしばらく続き、情報の受信と発信のバランスは悪いままだった。

もちろんホームページ・ビルダーやDreamweaverなどのWebオーサリングソフトはあったが、使い方自体を覚えるのがたいへんなうえ、最低限のHTML知識が必要とされた。また、1990~2000年代において絶対的な市場シェアを誇ったMicrosoftのInternet ExplorerがW3Cの標準規定を無視した独自仕様をたびたび採用したことで、Web制作者はつねに複数のWebブラウザによる表示チェックを強いられていた。インターネット上で情報を発信するには、相当高いハードルがあったのだ。

この状況を変えたのが、ブログだ。HTMLやCSSなどの知識が原則不要で、テキストのみならず画像などのリッチコンテンツが投稿できる。さらに、いまでは当たり前となったパーマリンクを採用し、検索されやすい整然としたデータ構造を有することで、HTMLを直書きするよりもはるかに効率よく情報発信できるようになったのだ。

当時はブログをオンライン日記サービスとしてとらえる向きが多かったが、やがて個人だけでなく、メディアや企業もコーポレートサービスへの利用を考えはじめた。それまでのWebサイトは見た目の美しさやユニークさなどが優先されていたため、Flashなどの多用や画像化する必要がないテキスト部分までGIF画像にしたりと、更新性を重視しないつくりだった。そんななか、多くの企業人が更新しやすく最新情報も配信しやすいブログをみて触発されたのだ。それがいわゆるビジネスブログと呼ばれる考え方だし、ブログを簡易CMSとしてとらえるようになったということである。僕は当時日立製作所でBOXERというプロジェクトを指揮していたが、そのときおよそ日本初となるSix ApartのMovableTypeベースとなる本格的Webサイト(http://boxer.ne.jp/)をつくった。いまだにほぼ当時の形のままで残っているのが愉快でもある。余談だが、僕が2001~2005年に日立製作所へ在籍していた期間中、ビジネスブログや企業向けRSSリーダーなどの普及に努めていたときのログ(http://boxer.ne.jp/information/publicized_list/)が残っており、感慨深い。

このように、まずは個人のための情報パブリッシングツールとして生まれたブログが、徐々に企業向けの簡易CMSとして進化していくなかで、MovableTypeよりもさらに簡単であるうえに、商用であっても無償で利用できるWordPressが台頭することで一気に企業ユースのポジションを獲得していく。いまでは大企業の多くがWordPressを常用しているし、ニュースメディアのほとんどがブログベースである。

*SaaS…(サース、Software as a Service)、必要な機能を必要な分だけサービスとして利用できるようにしたソフトウェアのこと。クラウドコンピューティング上で提供されるソフトウェアがSaaSと呼ばれるようになった。例としてGoogleのDocs,Sheets,Slidesがある。

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